ボスに連れられて昼からのセミナーに出席。今回は渡り鳥がどのようにして季節の変化を感じ取るのかという、我々の研究内容に関係してくる内容だった。いつも講演前にビスケットやコーヒーが用意され、お腹をすかせた学生が全部平らげるようなことを言っていた。講演後も興味のあるポスドクや学生は講演者と共にフリーランチを取ることが出来るらしい。フリーランチと言ってもピザだけど。しかも議論に参加しないといけない様なので、そんなに美味しい話でもない。3時45分からはうちのラボセミナー。論文紹介と自分の研究状況を説明する。今日はマロリーという、つい食べ物を連想してしまう名前の女学生の番。
「さて、見せてもらおうか、アメリカ大学生の実力とやらを。」
と思ってみていたが、大したことはなかった。日本でいう学部学生なのでこんなものか。しかしボスはさすが、べらべらと色んな知識が出てくる。オレは一言も発せずとっても無口な人に。ほとんどボスの独演会で終わった。
6時半からボスと一緒にセミナースピーカーを呼んだパーティーに出席することになった。何とかという教授の家(名前未だ覚えられず)にボスの車で向かう途中、アメリカに来て初めての雨が降った。どうやらうちのサーカディアングループの大御所らしい70過ぎのおじいさんがホスト。後は若い学生がほとんどだった。正直この手のパーティーは苦手である。いくつかのグループになってビール片手にみなあれこれ楽しそうにしゃべっている。しばらくして話題が無くなったら別のグループに入ってまたしゃべり始める、ということを繰り返す訳だ。イギリスでもそうだったが、欧米では気の利いた話題を楽しむということが不可欠の能力である。ロンドンの場末のパブでだって、野郎どもがメシも食わずおしゃべり肴にビールを飲んでいたものだ。そのような訓練を受けたこともなく、まして英語もろくに話せない日本人には大変キビシい状況である。高倉健のような男は絶滅危惧種に指定された珍獣なのだ。気後れしたオレだが、ボスがそばにいてくれたのでビール飲みつつ二人で話し始めた。するとしばらくしてポスドクの女性が参加、すぐに大御所も話に加わってきた。すでにこの時点でビール2本飲んでいた。酒が入ったとなると話は別だ。彼の家には日本の美しい着物だの扇子だのが飾ってあったのでどうしたんだ?と聞いたらここを訪れた日本人のプレゼントだという。こりゃとんでもない大物らしいな、と思ったがすかさず「そりゃすまんね、手ぶらで来ちゃって」と返したらおじいちゃん笑ってた。日本だったら打ち首か?基本的にみな話し好きなので一度話題が回転し始めると言語障害のオレが入り込むスキなどなくなり、相づち打って笑って、話題が途切れたら別の話を振って、それなりに楽しく会話に参加する。しばらくして大御所がいなくなり、3人で長いこと話し、最後はめいめいビールとケーキを取りに行き、俺は一人戻ってソファに座った。目の前の若者グループに加わろうかと思ったがやめてぼんやりしていた。若い連中がまぶしくて、うらやましくて仕方がない。しばらくしてボスが帰るか、というので二人で帰った。アメリカでももちろん飲酒運転は厳しく取り締まられるのだが、今の日本ほどではなく、少しくらいだと車を運転したりする。したたかに酔った夜だった。
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